本『クラシックの新常識』?

若い頃は自分自身で「クラシック音楽ファン」だと思っていたのだが、最近は「(クラシック)ピアノ音楽ファン」だと思うようになってきた。

オーケストラの曲で知っている、あるいは聴いたことのある曲はかなり限られているし、室内楽などほとんど知らないに等しい。それに世の「クラシック・ファン」が大好きらしいオペラやバレエ音楽にも興味がない。

でも、少し(一通り?)は知っておきたいとも思う。…ので、たまに思い出したように『痛快! クラシックの新常識』などという本を、図書館で見つけては読んでみたりする。



まぁ「入門書」の類なので、それほど面白い話はなかったのだが、次の3章構成にそってメモ的感想文を書いてみる。

第1章:クラシックの常識・非常識
第2章:大作曲家の素顔
第3章:クラシック名盤ベスト25

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第1章に「クラシックは当時のポップスだった?」という、よく聞く話が書いてある。「クラシックが静かに鑑賞すべき尊い芸術だと見なされるようになったのは、実は遠い昔ではない」と始まって、そのあとの話を期待したのだが、残念ながら何も書いてない。

いつ頃からどういう経緯で「尊く」なったのかが分かると、今後のクラシック音楽を考えるヒントになったかも知れないのだが…。

「クラシック作曲家」の定義?(↓)は、ちょっと皮肉交じりで面白いのだが、「質を求める芸術音楽主義」というのがよく分からない。音楽における「質」って何なのだ?「芸術音楽」とは?

現代においては、作品だけではなかなか食えない作曲家をクラシック作曲家と考えることができよう。要するに、ヒット至上主義ではなく、質を求める芸術音楽主義ということ

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第2章は、大作曲家の素顔?を2ページちょっとにまとめて、やや誇張して面白く紹介している。面白い話を読んで、興味を持って、1曲でも聴いてもらえたらラッキーくらいの軽い紹介記事だ。

で、パラパラ読み進むと「まだいるのか…」というほど大勢の「大作曲家」が登場する。数えると36人で、全部知っている作曲家だ。(私も)意外にたくさん知っているんだなぁ、と妙に感心。

この中で、ちょっと「あれっ?」と思ったのはアルカンくらい。シャルル=ヴァランタン・アルカンってそんなに有名だっけ?

…と思ってよく見ると、逆にプロコフィエフが見当たらない。ジョン・ケージはいるがシェーンベルクがいない。グリーグはいるが、シベリウスがいない…とか少し気になることがないでもない。面白いエピソードとかがなかったのか…な?

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ちょっと面白かったのは、ロマン主義の時代には2種類の音楽があるという話。

一つは「自分の心の中をひっそりと表したピアノ音楽」で、もう一つは「大規模なオペラや管弦楽曲で、『どうだ、オレはこう感じているんだぞ、おまえも賛成しろ』と聴き手を征服しようとする音楽」。

前者の例としてシューマン、ショパン、ブラームスなど、後者の例としてワーグナーやマーラーなどが紹介されている。

そうか!そうだったんだ! 私が好きなのは「自分の心の中をひっそりと表したピアノ音楽」で、あまり好きでないのがワーグナーに代表される「聴き手を征服しようとする音楽」だったんだ! なんか「腑に落ちた」感じ…(^^)♪

最初に書いた「私はピアノ音楽ファン」というのが、裏付けられた?…ような気もする。

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「第3章:クラシック名盤ベスト25」はちょっと疑問を感じた。

いや、掲載されているCDはすべて「名盤」なのだとは思う。でも、指揮者でいうと「カラヤン、カール・ベーム、ゲオルク・ショルティ、…」とかなり古色蒼然とした名前が並んでいる。たしかに記念碑的な名演奏なのだろうが「新」常識と謳うなら、これはちょっと古すぎませんか?という感じ…(^^;)。

ピアノ曲でいうと、マリア・ジョアン・ピリスの『ショパン:夜想曲全集』と、マルタ・アルゲリッチの『チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番』がとり上げられているのだが…。

『ショパン:夜想曲全集』


『ピアノ協奏曲:ラフマニノフ第3番 / チャイコフスキー第1番』


ピリスさんのは2014年発売(来日記念)だが、説明に「1996年レコード・アカデミー賞器楽曲部門受賞」とあるので録音はかなり前のもの。アルゲリッチのは「1980年と82年にレコーディングされたライヴ盤」のようだ。

もう少し最近の、ピアニストであれば、例えばダニール・トリフォノフとか、それが若すぎるならピエール=ロラン・エマールとかピョートル・アンデルシェフスキあたりの世代の名盤を紹介してほしいものだ…と思った。







ブゾーニコンクール始まった:今夜、守重結加さんライヴ ♪

ブゾーニ国際ピアノコンクールが始まった。

今夜6時(日本時間)のライヴ・ストリーミングは日本人の守重結加さんが登場する(↓)ので聴いてみるか?

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イタリアとの時差は7時間なので、現地11時からのセッションが日本時間で18時になる。これなら睡眠不足にならずに聴くことができる。

ブゾーニのライヴ配信画面には、「7時間後に…」という表記に加えて、日本時間の「8月23日午後6時」とか表示してくれるので便利だ。「リマインダー」まで設定できるらしい…(^^)♪。

リマインダー、オンにしてみたが何が起きるのだろう…?

【関連記事】
《ブゾーニ国際ピアノコンクール2017は8月22日から ♪》
《ブゾーニのピアノ作品を聴いてみた♪その1》
《ブゾーニのピアノ作品を聴いてみた♪その2》







ピアノの本棚2017 ♪

PianoHondana.png 2017年に読んだ本(更新中)
 2013 2014 2015 2016

:お薦め、→:関連記事
『蜜蜂と遠雷』
恩田 陸
『蜜蜂と遠雷』風変わりな感想文?
『痛快! クラシックの新常識』
:許 光俊
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『バイエルの謎: 日本文化になったピアノ教則本』
安田 寛
『バイエルの謎』面白い!最高のミステリー ♪
『ピアノ奏法―音楽を表現する喜び』
井上 直幸
井上直幸氏の『ピアノ奏法』いい!座右の書にしよう♪
『スタインウェイとニュースタインウェイ』
:磻田 耕治
スタインウェイを買うなら1900年〜1967年もの?
『レッスンの効果を倍増させる! ピアノ教本 選び方と使い方』
:丸山 京子
『ピアノ教本選び方と使い方』という本…
『ヴァンクライバーン 国際ピアノコンクール 市民が育む芸術イヴェント』
:吉原 真里
ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールについて
『楽譜を読むチカラ』
ゲルハルト・マンテル
『楽譜を読むチカラ』チェロ奏者からピアノ練習のヒント ♪
ピアノ練習のヒント♪その2
「いい演奏」のヒント ♪
『羊と鋼の森』
:宮下 奈都
「羊と鋼の森」感想文?
『マルタアルゲリッチ 子供と魔法』
オリヴィエ・ベラミー
アルゲリッチの本、一気読み! ♪
『ショパン・コンクール - 最高峰の舞台を読み解く』
:青柳 いづみこ
本「ショパン・コンクール」知っているピアニスト沢山 ♪

※Amazon「インスタントストア」終了(2017.10.27)に伴い内容をこちらに移動


ピアノの上達?曲の仕上げ?遠い道のり…

以前、自分のピアノ練習手順を整理してみようと思ったことがある。

《私のピアノ練習手順:1曲を仕上げる?まで》

その時の手順は次の4段階。

1. 譜読み:曲を知る・指使いを決める
2. 暗譜:曲を覚える・指を慣らす
3. 部分練習:弾き方訓練
4. 通し練習:通して弾けること


これでは不十分なことをうすうす?感じていたようで、「5. 仕上げ:音楽として」みたいな項目を追加できる日がくるといいなぁ…、などと書いてもいる。


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最近、モーツァルトのソナタ(K.570)を練習していて、そろそろ真面目に「仕上げ」という段階を考えた方がいいのかな〜?なんて思い始めている。

まだ「通して弾ける」までは行っていないのだが、それほど難しさは感じていない。なのに実際には「弾けない」。つまり、あちこちで引っかかって止まる。ちゃんと弾けているつもりの箇所でもミスをする…。

同じような問題は、「通して弾ける」ようになったあとも残るのではないか?という気がしている。

なので、曲の仕上げ方もそうなのだが、そもそもの「ピアノの上達」ということも、違った視点から考える必要があるのではないか?と…。

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まず問題点を整理してみる。

①「ある程度弾ける」状態と「止まらず思ったように弾ける」状態との間にどんな違い・課題(出来てないこと、不十分な点、問題)があるのか?

②「曲を仕上げる」という点では、その課題(が分かったとしたら…)をどのようにすれば克服できるのか?→「練習方法」

③それは「ピアノの上達」という点ではどういうこと(状態?)なのか?何ができるようになったということなのか?

「曲を仕上げる」と「ピアノの上達」とを分けたのは、ピアノが上手くなる(技術が向上する)ことと、ある曲を弾けるようになるための「問題解決」とは微妙に違うような気がしたからだ。

なお「仕上げる」には、当然「音楽としての質を上げていく」という要素があると思うのだが、今回はそこはとりあえず「横に置いて」、最低限「曲として成り立つ」(止まらずにその曲らしく弾ける)レベルを考えようと思う。

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では「ある程度弾ける」状態とはどんな状態か?自分自身のことを考えてみると…。

・指使いもほぼ安定して、楽譜を見ないでも練習できるようになった状態
・ミスすることもあるが楽譜通りの音を一応出せるようになった(と思う)状態

最初に書いた「4段階」で言うと「4. 通し練習」の前半くらいのイメージで、このあとの練習で「止まらずに通して弾ける」状態を目指す、というのがこれまでの練習であった。

でも、これまでの練習では「4. 通し練習」の最終段階でも「止まらずに弾ける」までは行っていなかった。「まぁいいか…」と棚上げにしていただけなのだが…(^^;)。でも、実際、この先が長いのだ、たぶん…。

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で、「止まらず思ったように弾ける」状態というのは、「全曲を通して、ミスなく、コントロールして弾ける」状態なのだが、何度弾いてもちゃんと弾けるという「確率100%」ということも含んでいる。

例えば「4. 通し練習」が完了したとして、止まらずに弾ける「確率」は?というと、現時点では良くて50%くらいだろう…。これを100%に持っていくには何が必要なのか?

第1段階?(初歩的な問題)としては、ミスしないということなのだろうと思う。で、その原因と対策は簡単にいうと…、

・暗譜が不完全→完全にする
・実は弾けてない→弾けるようにする
・不注意→集中する

…みたいなことになるだろう。まぁ、身も蓋もないという感じもする…(^^;)。

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一つには「より時間をかける」ということになるのだろう。繰り返し練習の回数とか練習時間とか…。

でも、それ以外に何かこんなもの(↓)はないのだろうか?

・暗譜を完全にするための技術や練習方法
・完全に弾ける状態にするための技術や練習方法
・ピアノ演奏での集中力と持続力の強化方法

とくに2つ目の「完全に弾ける」状態を得る方法が分かると、こんなに嬉しいことはないのだが…♪

今のところ思いつくのは、ミスしやすい箇所は「不完全」と認識して、より自信を持って弾けるような練習の工夫をすることくらいである。

まぁ、普通に「ゆっくり何度も弾く」「よりラクに弾ける弾き方を探す」「無理なく自然に弾けるようになるまで練習する」…ということか…な?

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それである程度ちゃんと弾ける確率が(仮に)50%から80%くらいに上がったとして、あとの20%は何なんだろう?つまり「止まらず思ったように弾ける」状態への第2段階…?

思いつくまま(妄想的?)に書いてみると…。

・完全にコントロールして弾く「技術」がある筈だ
・自信を持つことも必要かも
・精神的な力→集中力・持続力
・身体的な力→全身の使い方、息が続く呼吸法
・ミスを目立たせないリカバリー技術
・ミスを気づかせないほどの音楽の力

…う〜ム、なかなか難しい…。ここらあたりは、例えば「ペダルをうまく効果的に使える」といった次元とは違う何かがあるような気もしないでもない。

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ここで一つ疑問に思ったのは…。この段階になると必須項目としてソルフェージュや楽典などの「知識」は含まれるのだろうか?もしそうだとすると、苦手分野なので気が重くなってしまうのだが…(^^;)。

それから、プロのピアニストには「コツ」とか「考え方(哲学?)」みたいなものがあるのだろうか?もし何かあるとしたら、ぜひ知りたいものだ。

まぁ、これ以上ない知恵を絞っても、今の私のレベルでは何も出てきそうもないので、とりあえずはせめて「第1段階」を頑張ってみることにしよう…(^^)♪







モーツァルトのピアノソナタK.570弾き方♪色々…

昨日の記事《近況:モーツァルトのソナタ「新規まき直し」!》に、「どう弾くかというイメージを深める」ということを書いた。

YouTube で何人かのピアニストの演奏を聴いて、いくつかの弾き方のイメージが見えて来たような気がする。それを何となく分類?してみるとこんな感じ(↓)…。

①ピリス:上質の純正モーツァルト
②シフ:バッハ(バロック)風
③バレンボイム:ベートーヴェン風
④モーツァルトのオペラ風
⑤ソナチネアルバム風


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以下、簡単に説明をしてみる。

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①の「上質の純正モーツァルト」としたのは、私のモーツァルトに対するイメージに一番近くて、好みにも合っているピリスさんの演奏。私の中では「これぞモーツァルト!」という感じだ。

Mozart, Sonata para piano Nº 17, K 570. Maria João Pires

よくある「頭の良くなるモーツァルト」とか「植物が元気になるモーツァルト」とか、世間一般の「モーツァルト的演奏」というのがあると思うのだが、それよりももっと艶があるというか、魅力やダイナミックさに富んだ豊かなモーツァルトというイメージだ。

こういう演奏は、一見(一聴)簡単そうに見えて、実はとても難しいのではないかと思う。正しく弾くだけでは、こういう演奏にはならないと思う。

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②のシフの演奏は、ちょっと面白い。モーツァルトを少しバッハの時代に引き戻して、対位法的な色彩を色濃く出した演奏だと思う。タッチや装飾音符(トリルなど)からもバロックの香りを感じることができる。

YouTube では第1楽章しか聴くことができなかったが、端正な感じが好ましい。

Mozart Sonata B flat Major K.570 1st Mov. Schiff

シフの弾くバッハ(平均律とかフランス組曲とか…)では、対位法の中の内声やベースのフレーズがときおり浮かび上がって来たり(強調されたり)して、それがちょっと意外な面白さを醸し出すことがあるが、このモーツァルトでも同じような印象の部分がある。

例えば次(↓)のような箇所。上の段の左手の伴奏は、右手の旋律に呼応するかのようにやや強めに、かつノンレガート的に弾かれる。下の段では、突然「内声」(アルト:黄色いマーカ部分)が表に出てきて?びっくりする。

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③のバレンボイムの演奏は、シフとは逆に次の時代の雰囲気というか、ベートーヴェンの中のロマン派的な要素を感じさせるような演奏だと思う。バレンボイムの芸風?を反映しているとも言えるかもしれない。

「モーツァルトらしさ」みたいなものをとりあえず横に置いておくとすると、こういう響きとダイナミクスは好きである。「もっと自由に弾いていいんだよ」というバレンボイムの声が聞こえてくる…かも…(^^;)??

Mozart - Piano Sonata No. 17 in B-flat major, K. 570

これら①②③の演奏がそれぞれに成り立つということは、モーツァルトの音楽というものがバッハとベートーヴェンとその両方の要素を持っているからなのかも知れない。バッハの音楽を正しく引き継いで発展させ、ベートーヴェンの時代を先取りしているモーツァルト…?

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④の「オペラ風」というのは、誰かの演奏を聴いて感じたのではなく、いろいろ聴いているうちにふと思いついたものである。その理由は主に第1楽章にあるようだ。

例えば、何となく『魔笛』の音楽を連想させる?「同音連打の第2主題」とか、突然のフォルテの和音(21〜22小節目)による「場面転換」とか、オペラ歌手が歌い上げるようなフレーズ(23小節目からの「推移主題」)とか…。

で、オペラ風の演奏というのもありうるのではないかと YouTube で探してみた。いくつかの演奏を聴く中で、一番近いかな?と思ったのが次のミェチスワフ・ホルショフスキ(昔の巨匠?)の演奏。

Mieczyslaw Horszowski plays Mozart Sonata in B flat K 570

オペラ風と思って聴くと、第3楽章などもなかなか面白く感じる。

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⑤は私が勝手に命名しているが、要はピアノ教室のお手本のような演奏。

この曲は作りがシンプルというか、基本的な音型が多いので、ある意味「ピアノ教室的な」演奏というのが想像しやすい曲だと思ったのだ。技術練習のための素材、あるいは習得した技術を応用する曲としての選曲…?

聴く(鑑賞する)ための演奏としては、あまり面白くないかもしれないが、そういう「基本に忠実な」「ピアノの先生が(お手本として)好みそうな」演奏もありうると思った。弾き手の「意図」が分かりやすく実現されている演奏?

例えばこのPTNAの「お手本音源」(↓)などはそういう弾き方なのかもしれない。

モーツァルト/ソナタ第17(16)番第1楽章 K.570

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で、こうやって見てきて…、さて自分はどういう弾き方をしたいのだろう、と自問してみる。

①のような演奏をしてみたいとは思うが、難しい、私には無理。比較的、自分の弾き方としてアプローチしやすそうなのが③のベートーヴェン風(バレンボイム)のような気がする。もともとベートーヴェンが好きなのでそう思うだけなのかも知れないが…。

④のオペラ風も捨てがたいので、モーツァルトがこの曲で作り上げた「ピアノで作るジングシュピール(歌芝居)」みたいなものを想定しながら、自分なりの(ややベートーヴェン風の)「感情移入」のようなものをやってみようかと思っている。

どの程度できるかは分からないが、そういうイメージを持って、そのイメージに合った音を出すことを目指して練習した方が、格段に面白くなると思うのだ。さてさて、一体どんなものになるのやら…(^^;)?