レスピーギのピアノ曲

先日、クラシック音楽館(NHK Eテレ)でレスピーギの「グレゴリオ風の協奏曲」(ヴァイオリン)を聴いた。これがなかなか良かったので、ピアノ曲(独奏曲)でいい曲がないか調べてみた。

レスピーギ(イタリア、1879 - 1936)といえば「ローマの〜」3部作くらいしか知らず、それもどんな曲だったかすぐには思い出せない…(^^;)。

この人は若い頃に古楽の勉強をしたようで、その影響で「グレゴリオ風の…」などを書いているようだ。それが、単なるイタリア風ではない面白さを醸し出しているのかも知れない。

ピアノ曲にも「ミクソリディア旋法のピアノ協奏曲」「グレゴリオ聖歌による3つのプレリュード」など、古楽の影響をうかがわせる曲名が見られる。

なお、曲名の後の「P.xxx」は(ページ番号ではなく…)ポティート・ペダッラという人による作品目録番号だ。


いくつかの曲を聴いてみたが、私の場合、これまでに聴いてきたピアノ曲となんとなく雰囲気が違っていてけっこう面白いのかな、と思った。なかにはとてもきれいな曲もあって、このあと自分でも弾けそうな曲がないか調べてみたいと思っている。

ほとんど初めて聴く曲ばかりなのだが、一つだけ聴き覚えのある曲があった。で、調べてみると全音のピアノピースにある「シチリアーナ」という曲(↓)だった。ピアノ名曲集みたいなのに載っていたのかもしれない。



曲の出だしはこんな感じ(↓)。なんか弾けそう…♪

Respighi Siciliana.png



以下、『レスピーギ ピアノ曲集 1』という楽譜(↓)に載っている曲を中心に聴いてみた。




まず、先ほどの「シチリアーナ」を含んだ「リュートの為の古風な舞曲とアリア」の6曲。原曲はリュートと弦楽合奏という構成らしい。♪"Balletto"等は YouTube の音源。気に入ったのは「ガリアルダ」「イタリアーナ」「シチリアーナ」の3曲。

リュートの為の古風な舞曲とアリア
(Antiche danze ed arie per liute)
「小舞曲〈オルランド伯爵〉」♪"Balletto"
「ヴィッラネッラ」♪"Villanella"
「ガリアルダ」♪"Gagliarda"
「イタリアーナ」♪"Italiana"
「シチリアーナ」♪"Siciliana"
「パッサカリア」♪"Passacaglia"


「ピアノ・ソナタ ヘ短調」はあまり聴いたことない新鮮な感じが面白いが、今ひとつよく分からない。

Ottorino Respighi: Sonata per pianoforte in fa minore (P.16) (1897)


6つの小品(6 Pezzi)は下の2つの音源に収められている。「甘美なワルツ」「カノン」「ノクターン」「メヌエット」「練習曲」「間奏曲-セレナーデ」のうち、気に入ったのは「カノン」と「ノクターン」(伴奏パターンが面白い)。

Ottorino Respighi: 6 Pezzi per pianoforte (P.44) (1903) (1/2)
Ottorino Respighi: 6 Pezzi per pianoforte (P.44) (1903) (2/2)


聴いたなかで一番気に入ったのが「グレゴリオ聖歌による3つのプレリュード」。とくに第1曲・第3曲がいい。

Respighi - Tre preludi sopra melodie gregoriane (I)
Respighi - Tre preludi sopra melodie gregoriane (II)
Respighi - Tre preludi sopra melodie gregoriane (III)


ちなみに、2つのピアノ協奏曲(↓)も聴いてみたが、こちらはあまり好みではなかった。

ミクソリディア旋法のピアノ協奏曲
Ottorino Respighi: Concerto in modo misolidio, per pianoforte e orchestra, P. 145

ピアノ協奏曲 イ短調 P.40
Ottorino Respighi: Concerto per pianoforte e orchestra in La minore (P.40) (1902)


なお、関 孝弘というピアニストが、全音の楽譜と同じ内容でCD『レスピーギ:ピアノ曲集』を出している(↓)。





おまけ1:いろいろ聴いたあとで、こんな音源を見つけた。2時間13分の"Full Album"だそうだ。そのうち聴いてみよう…かな?

Respighi: Complete Solo Piano Music (Full Album)


おまけ2:全音から『レスピーギ ピアノ曲集 (2) 自筆譜に基づく校訂版』というのも出ている。

今回、途中でメゲてしまって、どんな曲か聴いていないが、「おまけ1」の"Full Album"に入っているかも知れない。参考までに「目次」をコピペしておく。

1アンダンテ ヘ長調
2アンダンテ ニ長調
3アレグロ
4レント
5前奏曲
6前奏曲(第2組曲より)
7交響的変奏曲
8スケルツォ
9組曲~ト長調
10組曲~ホ短調
11組曲~ヘ長調
12組曲~イ短調
13ピアノソナタ イ短調







アルゲリッチのピアノデュオ(2台ピアノ)

ちょっと前に、2台ピアノのための曲を探索しようと思い立ったのだが、何を聴いていいのかよく分からずあまり進んでいない。

《ピアノ・デュオの曲集(全音)》

2pianos.png

で、ふと思い出したのが、アルゲリッチが結構 2台ピアノのデュオをやっていることだ。なので、アルゲリッチがどんな曲を誰と弾いているのか、という興味で YouTube を探索してみた。色んな発見があって面白かった ♪

🎹は共演ピアニスト、👏は私のお気に入り度(1〜3個)→演奏というより曲? ※は楽譜などの解説にあったものの抜粋、または私のコメント(参考)。



●ブラームス : ハイドンの主題による変奏曲(2台ピアノ) 変ロ長調
Brahms: Variations on a Theme by Haydn, Op.56b (Argerich and Freire)
🎹ネルソン・フレイレ
👏👏
※2台ピアノの作品の中でも演奏頻度の高いブラームスの代表作品。


●ブラームス : 2台のピアノのためのソナタ Op.34b ヘ短調
Brahms. Sonata in F minor for two Pianos - I. Martha Argerich & Lilya Zilberstein
♪ - II.  ♪- III.  ♪ - IV.
🎹リーリャ・ジルベルシュテイン(ロシア/ドイツ、1965年4月19日〜)
👏👏👏
※ブラームスのソロ用ソナタより好きかもしれない。原曲はピアノ五重奏曲 Op.34。


●チャイコフスキー:「くるみ割り人形」組曲
Tchaikovsky: Nutcracker-Suite (Argerich/Zilberstein)
🎹リーリャ・ジルベルシュテイン(ロシア/ドイツ、1965年4月19日〜)
👏
※編曲: Nicolas Economou


●ラフマニノフ : 組曲 第2番 Op.17
Argerich, Freire - Rachmaninoff - Suite No 2, Op 17
🎹ネルソン・フレイレ
👏👏👏
※Tokyo, October 2003


●ラヴェル:ラ・ヴァルス
Argerich, Freire - Ravel - La valse
🎹ネルソン・フレイレ
👏👏
※Tokyo, October 2003


●モーツァルト:2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448
Mozart Sonata for two Pianos in D major K 448
🎹バレンボイム
👏👏
※Berlin, 19 April 2014


●モーツァルト=グリーグ:2台のピアノのためのソナタ K.545
Mozart - Piano Sonata No. 16 (Argerich, Anderszewski)
🎹ピョートル・アンデルジェフスキ
👏👏
※モーツァルトのソナタにグリーグが第2ピアノをつけたもの。聴きなれた曲が…妙に面白い。楽譜が見たい方はこのYouTube: {Live Lugansky/Rudenko}または全音の楽譜『モーツァルト=グリーグ 2台のピアノのためのソナタと幻想曲(全曲) 』


●プロコフィエフ=プレトニョフ:シンデレラ組曲
Sergei Prokofiev - Cinderella Suite (arr. Pletnev) - Martha Argerich & Mikhail Pletnev (premiere)
🎹ミハイル・プレトニョフ
👏👏👏
※なかなか面白い ♪ Live in Lugano, 30 June 2002。


●ショスタコーヴィチ:2台のピアノのためのコンチェルティーノ イ短調 Op.94
Shostakovich. Concertino for two pianos in A minor Op. 94 - Martha Argerich & Lilya Zilberstein
🎹リーリャ・ジルベルシュテイン(ロシア/ドイツ、1965年4月19日〜)
👏
※1953年、息子マキシムとの演奏を楽しむために書かれたため、グレード的には中級程度らしい。楽譜は全音『ショスタコービッチ コンチェルティーノ』


●カルロス・グアスタビーノ:3つのロマンス
Guastavino. Tres Romances - Martha Argerich & Mauricio Vallina
🎹Mauricio Vallina(キューバ、1970- )
👏👏
※カルロス・グアスタビーノ(1912-2000)はアルゼンチンの作曲家。Lugano Festival, 14 June, 2005の演奏。


●ミヨー:スカラムーシュ
Argerich and Ebi - Milhaud - Scaramouche Suite
🎹海老彰子
👏👏
※October 23rd, 2008, Lyon のライブ。



【関連記事】
《ピアノ・デュオの曲集(全音)》
〈ピアノ・デュオの曲を聴いてみる〉
〈ピアノ・デュオの曲(聴くための候補)〉







ピアノ・デュオの曲集(全音)

数日前の記事で《アンスネス+アムランのピアノ・デュオ!♪》の話を書いた。

で、この2人のプログラムの曲を一通り聴いてみて、けっこう面白かったので、しばらくピアノ・デュオ(2台のピアノのための〜、 2 pianos 4 hands)の曲を探索しようと思っている。

〈ピアノ・デュオの曲を聴いてみる〉
〈ピアノ・デュオの曲(聴くための候補)〉

2台のピアノのために書かれた作品はほとんど知らないので、楽譜や YouTube などいろいろ探し回っている。今日は、全音の楽譜で出ている楽譜を並べてみる。私の知らない曲ばかりだ。ご参考まで…。

42pianos.png


モーツァルト 2台のピアノのためのソナタとフーガ
(ソナタ K448、フーガ K426、アダージョ K546)


シューマン/ドビュッシー カノン形式による6つの練習曲


ブラームス ハイドンの主題による変奏曲・5つのワルツ
(2台ピアノの作品の中でも演奏頻度の高いブラームスの代表作品)


モーツァルト=グリーグ 2台のピアノのためのソナタと幻想曲(全曲)
(モーツァルトのソナタにグリーグが第2ピアノを付けた曲集)


グルリット 2台のピアノのための8つの小品
(ソナチネ・レベル、発表会に適切)


クレメンティ 2つのソナタ(2台のピアノ)


ショスタコービッチ:タランテラ


ショスタコービッチ 2台のピアノのための組曲


ショスタコービッチ コンチェルティーノ


西村朗 2台のピアノのための 水の詩曲
(第1楽章「水の鏡」、第2楽章「水の記憶」)


アレンスキー 2台のピアノのための組曲第2番「シルエット」 Op.23


アルチュニアン アルメニア狂詩曲









シューベルトのピアノソナタを理解する:吉田秀和さんの言葉


昨日の記事で「続きは『吉田秀和作曲家論集〈2〉シューベルト』を読んだあとで考える」と書いたのだが、読んでいるうちに頭の中がいろんな言葉で溢れてきて、まとまりがつかなくなってきた…。

で、とりあえず、自分で考える前にメモ書き(読書メモ)を作ることにした。メモを作ると、その最中に本の内容を再吟味できるし、自分の考えも少しは進めることができる。

読んだ感想としては、さすが吉田秀和さん、参考になることや思わず頷いてしまうことがたくさん書いてある。まさに「すべての音楽ファンの"指針"」である。


『吉田秀和作曲家論集〈2〉シューベルト』
IMG_0652.jpg


以下「読書メモ(抜き書き)」。数字はページ番号。


11
シューベルトの音楽は、その心の深層から生まれ、そこに帰るべく指向していて、私たちが彼の音楽を聴くのは、その "彼の音楽" の行う旅の途上でなのだ。

14
彼のソナタで目立つことは、意外なほど同一楽想のさまざまな書き換え、ないしはまったく異なるもののようにみえる楽想の間に秘めやかな形で連鎖を与えておくことの巧妙さで、これは変奏の技法というよりもむしろ後期のベートーヴェンのソナタや四重奏にみられる、楽想の変容(メタモルフォーズ)と呼びたいような技法の結果であろう。

19
シューベルトにあっては、一つの和声の流れが幾通りもの旋律を作りだし、それが、音楽に憩い(同じ和音の繰り返しだから)と同時に流れ(しかし、別の旋律線と、それから音の位置が違うために生じる音色の相違が加わるために。また、同じ和声を使っても、それが小節の中でおかれた位置が違うことからアクセントにずれが生まれてくるために)とを付与するという、独自の魔法的な魅力につながってゆく。

23
シューベルトにとって、音楽は、言葉の深い意味で、「回想」であり、作曲とは何かを想い出すことにつながっていたのではなかろうか?
私たちが、シューベルトの音楽を聴いて、まず感じるあの "親しさ" "親密さ" の印象は、そこに根ざすのではなかろうか?そうして彼の有名な旋律たちが、どこからか発してどこかへ向かってつき進む前進の音楽でないことは、改めていうまでもないだろう。それは、むしろ日だまりでの夢見心地の想いであり瞑想である…。

27
これほど悲しみからくる絶望を手放しで、音楽に盛りこんだ人間としては、私は、シューベルトのほかには、マーラーしか知らない。

28
(シューベルト、マーラーの曲の長さについて)彼らには、すべてを言いつくしたと考えられない間は、やめてはならない理由があり、それは、外部にある形式上の規制とか慣習とかによっては止められないのだ。

91
シューベルトのソナタの主題的統一というものは非常に強力に働いていてその点ではベートーヴェン、ブラームスといったこの道の大家と、ほとんど変わらないくらいの高さに達している。…彼の器楽は、関連のない主題が多すぎるとか、繰り返しが頻発するとか非難する人は、ごく表面的な観察しかしていないことがわかる。

92
この音楽が、名技のためのものでは絶対にないということは別としても、これこそ本当に心の深いところから生まれた音楽だからである。

問題は、ただ心を弱くさらけ出す破目に陥らないようにすることだ。私はそういう演奏も嫌いだし、そういう聴き手も尊重しない。それはシューベルトを裏切ることでしかない。

96
シューベルトは " p の音楽家" である。…彼が、f と書いたら、それがはじめて、普通の音量に当たると考えて、まず間違いない。

99
ルービンシュタインのピアノの音は、いうまでもなく豊麗そのものだ。…その豊かな響きの中にも、上声の旋律とバスの安定はもちろん、内声がたえず室内楽的親密さと透明さでもって、よく聴こえてくる…。
…弦楽四重奏として書かれたといってもいいような書法…

99
シューベルトには、こういう「止まれ、しばし、お前はあまりにも美しい!」と呼びかけずにはいられない瞬間があるのは事実である。

138
シューベルトの音楽は、単に旋律が美しいとか清らかな魂の流露であるといったことではなくて、彼の天才的な和声感の微妙さが基本にある。…音色が、リズムや音程、音強とならんで、根本的な要素になっている。

139
(ソナタ第13番 D664 の第2楽章の出だしについて)これは、いわゆる四声和声体様式の簡単な音楽にすぎないのだが、旋律が上声部だけにある古典の音楽とも違うし、通奏低音によるバッハのコラールの和声体とも違う。各声部が独立し、ことに内声にも歌がある。その各声部を、レガートやスタッカートを混ぜあわし、水平の線でのつながりもはっきりつけながら、垂直の和声の意味も、たっぷり響きとして提出しなければならない。(→指+ペダル)

まるで四重奏のピアノ編曲だといってもよい。しかし、それがシューベルトのピアノの書き方なのだ。

159
シューベルトの音楽は、聴く人を説得するより、音楽家といっしょに、夢みるように、誘ってゆくものだ。



……………

練習する(弾く)立場として参考にしたいと思ったことをいくつかあげてみる。


1. 同一楽想のさまざまな書き換え(変容)を意識する。

言葉を換えると「主題的統一」、あるいは各主題間の関連を感じることになるのだろうか。第1楽章の第1主題と第2主題も関連性があるという解説もあった(たしかCDのライナーノーツの一つに)。

また、ソナタ全体としては「循環ソナタ形式」の理解ということにつながると思われる。


2. 和声の流れに含まれる複数の旋律を意識する。

「四重奏のピアノ編曲」のように作られた部分での内声の動きや、複数の楽想が組み合わされた部分の弾き方を意識してみたい。各声部で音色を変えることなどは、私の技術レベルでは無理だろうが…。


3. " p の音楽家" であることを意識する。

ff が大きすぎないように、乱暴にならないように。また、「説得」するようにではなく、親密さを持って「誘う」ような弾き方を心がけたい。ただし、弱くはならないこと。



…こうして並べてみると、なかなか難易度の高いものばかりだ。音符どおりに弾けるかどうかさえ怪しい身としては、少なくとも「意識」だけでも持ちたいと思う。

それから、「止まれ、しばし、お前はあまりにも美しい!」と思う部分について、自己満足できる程度には「美しく」弾きたいと思っている。まずは第2主題…。

こういうことを意識した練習の中で、具体的な弾き方につながりそうなことが見つかるといいのだが…(^^) ♪







シューベルトのソナタ14番は暗くない!:管弦楽的な魅力 ♪


シューベルトのピアノソナタ第14番の第1楽章を練習中である。弾き方の参考になるような解説や分析がないかと、ネットを探してみるのだが、なかなか見つからない。

あっても、やたら「暗い」とか「暗く不気味な主題」とか印象だけを述べたものが多く(例:PTNA解説)、あまり参考にはならない。

さらに、「暗い」理由として、この作品を作った時期(26歳)のシューベルトの生活が「ドン底」にあったこと(梅毒の悪化?による入院、経済的な困窮など)を理由に挙げてあるのもの散見される。



でも本当に「そうだろうか?」と思う。

何人かのピアニストの演奏を聴き、第1楽章だけではあるが自分でも練習してみた感想としては、必ずしも「暗い」とか「上ろうとすれば下に引きずり込まれるような音型に支配されている」とは思えないのだ。

私の貧弱な感性と言語能力ではうまく表現できないのだけど、例えば第1主題は「カッコいい」「力強い」と感じる部分もあるし、第2主題の美しさはなんとも言えない。

もちろん、明るい作品とは思わないし、陰影の刻まれた作品だとは思うのだが、もう少し音楽作品として見たときの解説があってもいいのではないかと思った。



それから、シューベルト自身の落ち込んだ状況が反映されている、という意見についてもやや違和感がある。

もちろん彼とて人間なので、そういうことがまったくないとは思わないが、芸術家として一つの作品を仕上げている訳なので、創作意欲と気力を持った人間がその創造力と作曲技術をもって創り上げた作品を、それ自体で評価すべきではないだろうか?

違和感を感じるもう一つの理由は、同じころに作曲している傑作の数々である。作曲家としては充実した時期と言ってもおかしくない。

前の年、1822年に「未完成」交響曲を、このソナタの3カ月前には「さすらい人」幻想曲を作曲している。この14番ソナタは1823年2月の作品だが、同じ年の11月には「美しき水車小屋の娘」を完成させている。



…と、こういうモヤモヤを解消すべく、2つのことを始めた。

一つは、NAXOS(IMSLP の特典)のCDの中にライナーノーツ(Booklet)のPDFが付いているものがあるので、それ(英語だけど…)を少し読んでみること。

もう一つは、吉田秀和さんの意見を聞いてみること、つまり『吉田秀和作曲家論集〈2〉シューベルト』を読んでみることである。



吉田秀和さんの本は読み始めたばかりなのだが、ライナーノーツの方は2〜3読んでみて、面白い発見があった。

それは、この曲が「さすらい人」幻想曲と同じように「管弦楽的」であるということ。つまり、シューベルトはここでピアノの制約を超えたオーケストラ的な表現を試みているという解説があったのだ。



例として挙げられているのは、第1主題がオクターブで再現される前の「ティンパニー・ロール」のような cresc.。これ(↓)かな?

Kaiten1.png


それから、第2主題の到着を告げる「パワフルなトレモロ」。こういうところ(↓)の前後かな?

Kaiten2.png


それ以外にも、展開部で鍵盤上を駆け巡る「ボリュームのある和音」などが、「管弦楽的」な例として挙げられている。



そう思って聴きなおしてみると(ついでに「さすらい人」幻想曲も聴いてみた)、たしかにオーケストラの響きを感じる。このスケール感・躍動感を「カッコいい」と感じたのではないかと思う。

それから、急激な変化と思っていた「 pff の交代」も、オーケストラの別の楽器(群)だと思えば、自然に感じられる。

こういう(↓)部分も、右手と左手は別の楽器(群)と思えば分かりやすい。

Futen1.png



それから、とても参考になったのが下記の記事である。(感謝 ♪)

循環ソナタ形式を支配する 素晴らしい D784 第1楽章第1主題

「循環ソナタ形式」というのは具体的にはよく分かってないが、楽章をまたいで(全曲を通して)同じ主題が変形されながら使われるような形式のようだ。

とりあえず第1楽章しか練習していないので、他の楽章は楽譜を見ながら聴いて、上のブログ記事を参考に勉強しようと思っている。

この記事の中に(第1?)主題は「『息の長さ』が【命】」と書いてあったのは、そうかも知れないと思った。意外と?息継ぎ(フレージング)が難しいのをなんとなく感じていたので…。



続きは『吉田秀和作曲家論集〈2〉シューベルト』を読んだあとで、もう少し考えてみたいと思っている。


【関連記事】
《村上春樹が語るシューベルトのピアノ・ソナタ》
《シューベルトのピアノ・ソナタ》
《シューベルトのピアノの弾き方》
《シューベルトのピアノソナタ:予習》