エマニュエル・アックス:ベートーヴェンのピアノ協奏曲に感動♪

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO: Royal Concertgebouw Orchestra)のビデオサイトが無料になったというニュース(↓)を見て、ついでに聴いてみた、エマニュエル・アックスの弾くベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番がとても良かった ♪ という話。

✏️Concertgebouw goes free as video policy fails
✏️The Royal Concertgebouw Orchestra’s unique video platform
 (RCOの6月23日付リリース文)

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エマニュエル・アックス(Emanuel Ax、ポーランド、1949年〜)は以前から知っているピアニストで、やや地味な印象があったのだが、このベートーヴェンを聴いてかなりお気に入り度がアップした。(プロフィールはこちら

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そもそもは、RCOのビデオサイトがどんな感じ(ビデオの品質など)かな?と思って、ちょっとだけ聴いてみるつもりだった。


ところが、最初に見つけたエマニュエル・アックスが弾くベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を聴き始めると、それが素晴らしくて、つい最後まで聴いてしまったのだった…(^^)♪

音楽的にとても豊かな演奏というのか、これぞ「音楽」という感じ。オーケストラとの息もピッタリ。ロイヤル・コンセルトヘボウのオーケストラの響きもなかなか良かった。

とりわけ素晴らしかったのが多彩で表現力豊かなピアノの音。場面に応じてそのフレーズにあったタッチを縦横無尽に繰り出す。それが音として美しいだけでなく、音楽の語り方としてとても魅力的な説得力を持っている。

オーケストラとピアノのバランスも非常に洗練されている。オケとピアノが一緒になる合奏部分もあり、ピアノが主張する部分もあり、そのメリハリが気持ち良い。

管楽器とのかけあい、ソロ部分の存在感(カデンツァの迫力はすごかった)、ソロからオーケストラが入るあるいはオーケストラの伴奏にピアノが滑り込むところ、どれ一つ取っても完璧なアンサンブルである。上質な室内楽がそのままスケールアップしたような感じ…♪


最近、コンチェルトというとピアノコンクールのファイナルぐらいしか聴いていなかったので、久しぶりに本物のコンチェルトを聴かせてもらったという感じだ。(コンクールも「コンクール弾き」ではない、こういう味のある演奏を評価した方がいいと思うのだが…)

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ところで、「RCOビデオ」であるが、映像はあまりよくないが、音はパソコン+イヤホンで聴くには十分だと思う。通信能力がやや弱いのか、演奏が始まるまでに少し時間がかかるのは難点だが、演奏が始まってからはとくに問題はなかった。

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のサイトなので、オーケストラ作品が多いのは仕方ないだろう。ピアノ協奏曲を検索してみると、6つくらいしか見つからなかった。それでも、どれも一度は聴いてみようと思えるラインナップ(↓)だ。

・ベートーヴェン第1番(ラルス・フォークト、2014年3月)
・ベートーヴェン第2番(クリスティアン・ベザイデンホウト、2012年12月)
・ベートーヴェン第3番(エマニュエル・アックス、2013年9月)
・ショスタコーヴィッチ第1番(ユジャ・ワン、2014年9月)
・ラフマニノフ第3番(アレクサンダー・ガヴリリュク、2013年3月)
・バルトーク第3番(イェフィム・ブロンフマン、2013年8月)

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N響なんかも、こういうサービスをやってくれたら…と思うのだが…。







イリーナ・ランコヴァ:弾きっぷりのいい女性ピアニスト ♪

《私の鑑賞スタイル:ピアノ演奏を聴くときのモード?》の記事で「ちょっと『男前』?な演奏で気に入っている」と書いたイリーナ・ランコヴァ(Irina Lankova ↓)であるが、少し他の音源も聴いて調べてみた。

Irina Lankova plays Schubert Klavierstücke D. 946 No. 2 in E Flat
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Irina Lankova 公式サイトがわりと充実しており、YouTube にIrina Lankova チャンネルもあるので、音源や情報は探しやすい。

NAXOS でも Indésens というレーベルから出ているCDが4枚ほど見つかった。そのうちの1枚がシューベルトの "Klavierstücke D946" を含むものだった(↓)ので、聴いてみた。

Irina Lankova Plays Schubert


D946 以外には、ピアノソナタ20番(D959)と即興曲D899-3 が入っている。聴いた印象はまずまずという感じ。

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演奏としては、ちょっと気に入ったのが、実はショパンのスケルツォ2番。ショパンの演奏はいいと思うものになかなか遭遇しないのだが、これは久しぶりにいい感じだ。「お手本」として聴いている D946-2 と同じで「男前」というか、弾きっぷりがいい ♪

聴いていて、ある意味「ショパンらしさ」という名の「耳タコ」がない。とは言っても、中間部はとてもきれいに歌っている。最後まで気持ちよく聴かせてもらった(↓)。

Irina Lankova plays Frederic Chopin Scherzo No.2 Op.31

もう一つ気に入ったのが、やや対象的な静かな美しいバッハ(↓)。曲はたぶん初めて聴くが、どこかで聴いたような気もする。

Irina Lankova plays Bach/Marcello Adagio

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で、イリーナ・ランコヴァ(Irina Lankova)はどんなピアニストかというと…。

1977年9月11日、ロシア生まれ。モスクワ・グネーシン音楽院でレフ・ナウモフ(ゲンリヒ・ネイガウス門下)に師事した。アシュケナージにも習ったことがあるようだ。

Indésens Records から、ラフマニノフ、リスト、スクリャービン、ショパン、シューベルト等のCDを出している。ヴァイオリニスト Tatiana Samouil と組んで、"Caprice"というデュオ・アルバムなども。

わりと活動的な人のようで、いろんな試みもやっていて、公式サイトに紹介ページがある。

"Infinity"
"Piano unveiled"

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この "Piano unveiled" というのはちょっと面白くて、バレンボイムの Barenboim チャネルのように、4〜5分程度のミニレクチャー?の動画を出している。英語とフランス語。こんな雰囲気(↓)で…。

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現時点では4つしかない(↓)が、今後増えていくのかな…?

Episode 1: Interpretation(解釈:ショパン:スケルツォ2番)
Episode 2: Elements(要素:ショパン:スケルツォ2番)
Episode 3: Silences(静寂:バッハ:Marcello Adagio)
Episode 4: Impressionists(印象派:ドビュッシー:月の光)

Episode 2 と 3 がやや面白かった。Episode 1 では3種類の解釈で、スケルツォの出だしを弾いてくれるのだが、分かるような同じような…? まぁ、こちらの聴く力が不十分なんだろう…(^^;)。

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結論としては、今のところ「お気に入り」とまでは行かない「候補」レベルかな…。いくつか聴いているうちに、何となく飽きてくるような気がしてくる。曲によってはなかなかいいのだが…。

で、試しに以前からの「お気に入り」のピリスさんのシューベルト(↓)を聴いてみた。

Maria João Pires plays Schubert - Drei Klavierstücke - D.946

やはり、こちらの方が「鑑賞」モードで聴くときは断然いいと思う。ただ、こんなにきれいな音でこんなに美しく弾くことは、どうやったらできるのか、まったく想像もできない…ので「お手本」にはならない…(^^;)?







日本人ピアニスト探索2の最終結果 ♪

前回ご報告した時点(5月9日)では、50人のリストから5人の候補者を選んだ。それが、三輪郁、近藤嘉宏、高橋悠治、児玉麻里、藤井一興の5人のピアニスト。

《日本人ピアニスト探索その2:候補者選びの結果 ♪》
《日本人ピアニスト:探索候補リスト作成中 ♪》

その後、NAXOSにCD音源があった児玉麻里さんについてはじっくり聴いたりしたが、そのほかの人については、再度 YouTube 音源を聴いてみた。

で、5人を選んだ時点で、ある程度結果の予測はついていたのだが、お気に入り候補として残ったのは、けっきょく以前から名前を(何となくも含めて)知っていた3人だ。つまり、高橋悠治、児玉麻里、藤井一興の3人。

簡単に、5人の「お気に入り度」判定、というか感想を書いてみる。

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三輪郁さんはモーツァルトをきれいに弾くのだけど、逆に言うとそれだけ…という印象。

近藤嘉宏さんも、指がよく回るし弾き方もなかなかいい感じだし、演奏もそんなに悪くはない。ただ、何となく面白みに欠けるというか深みがないというか、あえてこの演奏を聴きたいとは思えなかった。ときに弾き飛ばしているように感じるところもある。

お二人とも、日本人ピアニストとしてはある程度の水準なのだと思われるが、ピアノ教室のお手本的な「とても上手な人」以上の感想は持てなかった。

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児玉麻里さんは、ベートーヴェンのピアノソナタ全曲を録音したCDがNAXOSにあったので、それを中心にいくつかの演奏を聴いた。

その中では、第29番「ハンマークラヴィア」がなかなか良かった。

〈児玉麻里:チェックメモ〉

ただ、何と言ってもベトソナは「激戦区」。たくさんの素晴らしいピアニストや演奏がある中で、あえて児玉麻里さんを聴く理由はあまり見当たらないと思った。まぁ、たまには違うピアニストの演奏を聴いてみるか、というときに思い出すかも知れない…というレベルだ。

ちなみに、ちょっと前に話題になった、妹の児玉桃さんとの共演CD "Tchaikovsky: Ballet Suites for Piano Duo" (↓)も聴いてみた。悪くはないが、それほど面白くもなかった。



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一番意外だったのは藤井一興さん。プロフィールを見ると「大先生」なのだが、演奏が予想に反して(失礼!)活き活きしていて魅力的であった。

NAXOS では "Igor Markevitch Piano Works" というCD(↓)があったのだが、この中にあるピアノ曲は YouTube で聴いた2曲と同じであった。



2曲とも知らない曲(知らない作曲家:Igor Markevitch)であったが、両方ともなかなか面白い曲だと思った。演奏も魅力的なので、もう少し聴いてみたいと思っている。(参考のため、YouTube 音源を再掲 ↓)

Kazuoki Fujii - Variations, fugue et envoi sur un thème de Haendel
Kazuoki Fujii - Stefan Le Poète, impressions d'enfance pour piano

驚いたのは、2014年から毎年ちょっと面白いCD(「ドビュッシー&別の作曲家」↓)を出していて、そのいずれもが「レコード芸術」誌で「特選盤」に選ばれていることだ。活動内容も若々しく意欲的な感じを受ける。(→参考:本人サイト

『ドビュッシー/デュティユー:前奏曲集』(2014年)


『ドビュッシー&ラヴェル』(2015年)


『ドビュッシー&ショパン』(2016年)


参考→〈藤井一興:チェックメモ〉

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高橋悠治さんは、もともとは作曲家として以前から興味があった人である。今回少し聴いてみて、ピアニストとしてもなかなか味があっていいなぁと思ったのだが、やはり演奏家というより「音楽家」として見た方がいいだろう。

NAXOS には30枚近いCDが登録されているが、ほとんどが「作曲:高橋悠治」である。『「不屈の民」変奏曲』だけは、古い録音(1989年CDリリース ↓)だが、「ピアニスト:高橋悠治」となっている。

『ジェフスキー:不屈の民「変奏曲」』


たぶん、下記 YouTube 音源と同じ?

Frederic Rzewski - The People United Will Never Be Defeated!

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ということで、今回の日本人ピアニスト探索の一番の収穫は藤井一興さん ♪

ただ、高橋悠治さんと児玉麻里さんも、機会があったら(かつ演奏曲目がよかったら)ナマで聴いてみたいと思っている。







ZEE ZEEというピアニスト ♪

オックスフォード・ピアノ・フェスティバルのサイトをチェックしたときに、何人か知らないピアニストがいた。その中の若手2人を少し聴いてみたのだが、中国の Zhang Zuo(ツァン・ツォ?)がちょっと良かったので「お気に入り」候補になるかも知れない。

参考:《オックスフォード・ピアノ・フェスティバル、凄い!♪》

音がクリアできれい。ただ音がきれいというだけではなく、その音でしっかり音楽が構築されていて、演奏が若々しいというか清冽というか、聴いていて好感が持てる。「詩心」みたいなものを感じる。

あえて注文をつけるとすれば、もう少し音質に変化があった方がいいとか、もう少し深みがほしいとかいったことがあるかも知れないが…。たぶん、そんな必要もないだろう。


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上の写真は彼女の公式サイトだが、なぜか "ZEE ZEE" となっている。通称か愛称として使っている名前のようだ。なんと読むのかな…?

生まれは中国深圳市、1988年。"the 1st International Piano Competition in China" で優勝したとあるが、どんなコンクールなのかは分からない。

公式サイトには、マネジメント: "CAMI Music" となっているので、けっこう実力を認められているピアニストのようだ。

ちなみに、CAMI(コロンビア・アーティスト・マネジメント)は有名な大手音楽代理店でルカくん(リュカ・ドゥバルグ)がチャイコンが終わってすぐに契約したときに、初めてその名前を知った。

《ルカ・ドゥバルグ君、大手音楽代理店と契約!》

このときに引用したピアニスト一覧の写真を見ると、最後に Zhang Zuo がちゃんと載っている…(^^)♪

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音源は YouTube にある程度あがっているが、公式サイトの MEDIA というところからもいくつかリンクされている。2013年のエリザベート王妃国際ピアノコンクールで5位に入賞しているので、そのときの音源もある。

その中で一番気に入ったのがシューベルトのピアノソナタ第13番。YouTube のタイトルでは "Piano Sonata #15" となっているが、単純なミスだろう…。

ZEE ZEE plays SCHUBERT Piano Sonata #15 In A major, D.664 - 1. Allegro moderato / 2. Andante / 3. Allegro

この音源はなぜか「限定公開」になっているので、公式サイトからしかたどれない。(ここにリンクを貼っていいのか悩んだが、公式サイトで公開しているので大丈夫だろう…)


ラヴェルの「夜のガスパール」(オンディーヌ)もわりと好きな演奏だ。

Maurice Ravel Gaspard De La Nuit played by Zhang Zuo(Zee Zee)

パーヴォ・ヤルヴィ指揮のベートーヴェンのコンチェルト第1番もなかなかの好演。

Ludwig van Beethoven - Piano concerto No. 1 / Zee Zee / Paavo Järvi / Estonian Festival Orchestra

ちょっと危なっかしいところもあるが、シューマンの "Symphonic Etude" もいい感じ。

Robert Schumann 12 Etudes Symphonic playd by Zhang Zuo(Zee Zee)


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もう一人の若手 Saleem Ashkar(サリーム・アシュカー:1976年〜、イスラエル)も少し聴いてみた(↓)が、こちらは音が少し硬すぎてあまり好みではなかった…。

Saleem Ashkar - Highlights from the second recital in his complete Beethoven Sonata Cycle
Saleem Ashkar - Beethoven Piano Sonata No 31 in A flat, op. 110 (Complete)







日本人ピアニスト探索その2:候補者選びの結果 ♪

5月の国内コンサート(ラフォルジュルネ等音楽祭を含む)に出演するピアニストを50人リストアップして、日本人ピアニストの探索第2弾をやってみた。

《日本人ピアニスト:探索候補リスト作成中 ♪》
〈日本人ピアニスト探索2候補者リスト:worksheet〉

とりあえずざっと聴いて、めぼしい候補者を探す「スクリーニング」(予備審査?)みたいなことを終えた。10人くらいは残るかなと思っていたのだが、結果は5人。全体的にも、あまり芳しい状況ではなかった。

残ったのは、三輪郁、近藤嘉宏、高橋悠治、児玉麻里、藤井一興(順不同、下記の絵の順)。高橋悠治、児玉麻里の二人は知っている、藤井一興という名前にも聞き覚えはある。


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50人のうち、YouTube にほぼ音源がないピアニストが30人もいたのには驚いた。日頃接する音楽のかなりの部分がネットになっている時代に、これではいないも同然だ。

音源がアップされているピアニストについても、動画そのものの品質も今ひとつだし、演奏に関しても残念なものが多い。ちょっと探索方法を考えた方がいいかも知れない…。

なお、山口哉(なり)、波田(はだ)紗也歌、堀内龍星という3人はとても若いので「保留」とした。3人とも「スタインウェイ・コンクール in Japan」の大賞受賞者。これからどう伸びるのかまだ不確定。

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下記に、この5人の公式サイトまたはプロフィールへのリンク(→Prof.)と、チェックした音源をあげておく。

各演奏に対する感想は書かないことにする。ざっと聴いただけで、なんとなく「好きか嫌いか」「聴くに値するか」「音楽になっているか」あたりの基準で、ちょっと迷った人もいないではなかったが、最終的には直感的に判断している。


三輪郁 →Prof.

"Iku Miwa plays Mozart" from TV program 1
"Iku Miwa plays Mozart" from TV program 2
Schubert Piano Sonata No.16 D.845-1


近藤嘉宏 →Prof.

Beethoven: "Appassionata" 3rd mov. /Yoshihiro KONDO(1999)
Yoshihiro Kondo plays Frédéric Chopin's Polonaise "Heroique "
Yoshihiro Kondo plays Brahms"Intermezzo in A major, Op.118-2”


高橋悠治 →Prof.

Yuji Takahashi plays Bach Six Partitas
Yuji Takahashi 『花簂』"Hanagatami"
Frederic Rzewski - The People United Will Never Be Defeated!


児玉麻里 →Prof.

Mari Kodama - Beethoven Piano Sonatas
Mari Kodama plays Stenhammar piano concerto in Gothenburg (excerpt)


藤井一興 →Prof.

ドビュッシー&ラヴェル/藤井一興
フォーレ ノクターン 第4番 変ホ長調 Op.36
Kazuoki Fujii - Variations, fugue et envoi sur un thème de Haendel
Kazuoki Fujii - Stefan Le Poète, impressions d'enfance pour piano


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このあと、この5人のピアニストについて一人一人聴いてみようと思っている。音源としては、YouTube と NAXOS Music Library くらいしかないが、近藤嘉宏以外はNAXOSに何枚かCD(室内楽なども含めて)があるようだ。

まぁ、ぼちぼち…と。